Once 2話 「はじめて」

 

 

私が初めてセックスしたのは中学二年生の時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

先輩の家に遊びに行って、ゲームして、私がオムライスを作って、先輩はそれを食べて美味しいって言った。それが嬉しくて、嬉しくて。寄り添って。

 

 

 

 

私は、初めて裸を見せた。

 

 

 

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「ストリッパーかぁ・・・」

 

私はパソコンの画面を眺めた。念のためと、部屋の鍵も閉めた。ストリップについては、なんとなくだが知っていた。温泉街には必ずと言っていいほどあって、おっさん達に囲まれて、アハンウフンと裸を見せる。華やかな世界とはかけ離れた、嫌なピンクの色のする世界。時代と共に劇場の数も減って、正直私も調べるまでは絶滅したと思ってた。しかし、今なおその姿を残し営業を続ける場所がある。数は少ないが、確かにこの世界にストリップ劇場が残っていた。

 

「いやしかし、美人が揃いに揃ってやがる」

 

思わず声が漏れる程、ストリッパーは美形が多い。もっとこう、おばさんがやってるようなイメージだったが、このクオリティは女の私も見惚れてしまう。しかしリンがここに混ざる想像がどうしてもできない。どうしても浮く、浮くというか、ジャンルが違うというか。元々リンは姉御肌で気が強いので、美人のソレとは言い難いのだ。

 

 

ただ、冷静になってみると話は元に戻る。

 

「なんでストリッパーになりたいんだろう」

 

 

 

 

 あの日以来、私はほかの誰かに裸を見せる事をしていない。勿論恥ずかしいってのもあるけど、抱かれるあの感覚が頭にこびり付いてしまったからだ。裸を商売道具に使うなんて、想像もできない。自分に価値を見出す人が果たしてどれほどいるだろう。そこに祝福があるか、人としての最低限の美徳を感じるか。リンは何を目指し、そんな道に進むのだろう・・・。

 

 

電話が鳴った。心臓が飛び出るほどビックリしたため変な叫び声を上げてしまいながら電話に出た。

 

「もしもし!」

「よっ、真夜」

「突然なんだよ!めっちゃ変な声出たわ!」

「・・・あ、取込み中でした?」

「アホ!ちがうわ!」

「アハハハハ」

 

 

 いつも、リンは失礼なことを言う。それをどこか待っている自分もいる。そうだよな、急に変わるなんてことは無い。何急いでしまっているんだろう、私。

昨日も、今日も同じなんだ。

 

「・・・昨日は、変な事言ってごめんな」

「え?」

「河川敷で言った事だよ」

「あぁ~将来の夢の事ね。はいはい、謝らなくていいよ別に」

「・・・真剣なんだ。それは、分かってほしくて」

「・・・うん。バカにしない。それは、約束する」

「・・・」

「・・・黙らないでよ、あ、そうだ今週出すプリントなんだけどさ」

「・・・」

 

なんでこんなに気まずいのだろう。私の気持ちを見抜いてるようで怖い。

 

「ねぇ、真夜」

「なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の休み、一緒にストリップ観に行こう」