ゴウストリイト 2話

登場人物

・三浦さくら

・先生

・生徒多数

 

 

後日、雨が降りしきる学校。雨が傘をはじいていく。三浦は一人、ブルーシートに覆われた植木の一角を見つめる。そこは昨日凪が飛び降り、落下した地点。雨でわかりにくいが、微かに凪の血液と思われる跡が残る。三浦はしゃがみ、手を伸ばしブルーシートの端を掴んでは揺らしていた。

 

三浦  なんで死んじゃったの?

 

教室、いつもよりも騒がしい。重たい表情を浮かべた先生が入ると、ぴりっとした空気に包まれた。

 

先生  皆が知ってる通り、昨夜、学校の屋上から三浦が飛び降りた。発見されたときには既に息が無かったそうだ。分かってほしい、誰のせいか、誰が悪いのか、今はそれを考える時ではない。西条凪が自ら命を絶った、その事実だけを僕たちは受け入れなければならない。背負い続けなくちゃいけないんだ。

 

泣き出す生徒たち、それらを横目に三浦は机にうつぶせになる。

 

先生  忘れないでほしい!西条はもうこの世界にいない、でも、皆の心の中に生き続けていることを!!お前らが忘れない限り、西条はいつまでもそばにいる!大切なクラスメイトだ!仲間なんだよお前ら!

 

きっと先生の目には涙が浮かんでいない。ただの綺麗ごとを述べているだけだ。三浦はペンを握り、ノートにすらすらと書き記す。

 

三浦  私の心にも凪っちはいるの?生きてるなら、どこにいるの?

 

 

 

 

カバンを振り回しながら教室を出る生徒たち、校舎を走り回る男子、シャッター音が鳴り響く廊下。変わりなき日常、変わることの無き日常。三浦は、再びブルーシートの敷かれた現場へと向かう。

 

三浦  笑いそうになっちゃったよ。皆、一昨日と、昨日と同じ顔だった。誰でも簡単に泣いちゃうんだから。価値なんてない涙を見せびらかせてさ。あいつらも、自分が死んだらそうしてほしいのかな?・・・ねぇ凪っち、私、どうしたらいいんだろう。毎日ここに来てもいいかな。そうしたら、私の事、許してくれるかな。

 

 

西条凪は不登校だった。居場所のなかった凪にとって唯一羽を伸ばせたのが、学校の屋上だった。生徒が訪れることの無い場所、誰にも関わらず、話すことも無く、自由に過ごせる場所。凪は屋上に上がっては外を眺め、道行く人々を眺めていた。確かに彼女の時間は動いているのに、屋上は、ただ陽が傾くのを彼女へ真っ先に伝えるだけだった。凪がここで何をやっていたのか、どんな時間を過ごしていたか分からなかったため、自殺という結末に中には受け入れ納得した人もいた。

 

 

 

現場に添えられる花束は 、日が経つにつれ少なくなっていった。