ゴウストリイト 1話

「ゴウストリイト」 1話


登場人物
・凪


海の見える夜の学校(個人的イメージは田舎で遠くだが微かに波の音が聞こえるような場所、住宅地に隣接するため環境音も十分に聞こえる。時刻は20時ごろ)。屋上で一人凪はパラパラと日記帳をめくっている。読むスピードは普通だが、深みのある捲り方を。半年間毎日欠かさず書いた日記帳、数冊に及ぶその日記帳は分厚い。
冒頭は、凪の日記帳を読む台詞から始める。
日記を書き込む音。「ふぅ・・・」と一息入れる声。

 

凪   9月9日、どこに座ろう、何を置こう。広い屋上に大の字になって夜空を見上げるのもいいし、身を乗り出して海を眺めるのも悪くない。私は自由、なにをしても自由だ。

 

凪   9月11日、面白い事があった。色んな人がやってきた。彼女に振られた人やぬいぐるみをずっと持っている人。関西弁の癖が強い人とか生きるのが退屈と言う人・・・。みんなと一緒に屋上から飛び降りて自殺しようと約束した。不思議な気分、でも、ほっとした。私だけじゃない、みんな、辛いことがある。

 

凪   9月16日、楽しい、楽しい、楽しい。そればかりだ。日差しが照る屋上は暑い。タオルを首にかけ、秘密基地のように円になって作戦会議。バレちゃいけない、決行までは指折りだ。ふざけ、笑いあう私達ってなんだろう。でも多分、生きる事から逃げるとは、そういう事なのだろう。

 

凪   9月17日、皆で遺書を書いた。手探りで作った遺書は何か、きっと大切なものが抜け落ちてるような気がするけれど、ようやく形に出来たんだ。最初に誰が読むだろう。誰が良いだろう。

 

ぱらり、ページをめくる。声のトーンをやや落として。

 

 

凪   10月1日、やっぱりそうなんだ、みんな、御託を並べ、階段を一段とばしに降りていく。ああ、また取り残された。なんでだろう、死ぬのは怖い事?恐ろしい事?柵があるから?こんなもの、誰だって乗り越えられるのに。

 

 

風の音が入る。既に書き終えた日記帳を音読。

 

 

凪   12月7日、冬だというのに温かい風が吹きました。怖い、でもいいの。怖くてもいい、この世界には、もう私の居場所なんてないから。この日記帳も、最後のページを書き終えた。置いたままでも大丈夫かな?許してね、多分これが、私の、唯一の未練だから。さようなら、屋上(ここ)から見上げる夜空は今日も綺麗だよ。

 

 

柵を掴むような音、風が吹いている。
凪ははだしの状態で冷えたコンクリートの上に立ち、目の前遠くに広がる海を見つめる。
振り返り後ろ向きになった後、深呼吸を一度行い、背を向けた状態で落下する。しばらく
経って、強い衝撃音。